とにかく美味しい食べものがでてくる物語と思っていた。いや、でてくるけど、その料理たちには思い出がたくさんつまっていた。
主人公は残された時間の少ない料理批評家の男。そんな最期の時間、ベッドの中で、この男は心に根付く、「あの”味”」を思い出すためにさまざまな料理とそれに伴う出来事を思い出いだしていく。そんな話。
この男はなんだか嫌なやつ。お金もちで、偉そうで、冷血漢。死の淵に立っても食べ物のことを考えてるなんて。奥さんや子供達に思い残すことはないのかよっ。と言いたくなる。
しかし読み進めていくと、男の話はどんどん好きになってしまう。男が語る食べ物が食べたくなるし、食とその背景にある思い出に心がうっとりしてくるっていうのかな。
誰がなんと言おうと、どう思われようと自分の信念を最後まで貫き通す ということは簡単なことではない。家族を大事にしてなかったり、子供から憎まれるのは嫌だけど、何かを守るためには何かを捨てなければいけない人だったのだろう。もう少し家族のこと愛せだだろ。と思うけど。これは娘や奥さんの立場からの意見だもんな。
わたしにとっての現時点での至福の味ってなんなんだろう。